Merengue Panic



Advent Calendar 2022 初日の記事

ポリリズムことば(1)

メレンゲやサルサのリズムはアフロ由来のポリリズムがベース。 複数の人がそれぞれ違うリズムを演奏することで全体のグルーヴが仕上がります。 そんなポリリズムを練習するための歌い言葉を考えてみる5回シリーズの1話目!

ポリリズムとは

ポップスをはじめとする馴染みのある音楽の多くは、 1小節の中を4つの分けて演奏するのが一般的でこれを4拍子と呼んでいます。 同じように1小節の中を3つに分けると3拍子。 4拍子に比べれば数は少ないですが、比較的よく聞きますね。 童謡の『ぞうさん』とかサティの『ジムノペディ』なんかは3拍子です。

ところでジャズやラテンなどのアフロ由来のリズムは1小節を4つに分けたフィールと 3つに分けたフィールを同時に感じているというのが最大のポイントです。 つまりひとつの曲を3拍子に聞きながら、かつ4拍子にも感じているという状態で、 全力で3拍子、全力で4拍子ではないというあり方をします。 こうした複数のリズムグリッドを同時に感じるリズムをポリリズムと呼んでいます。 ラテン音楽もアフロ音楽のリズムですのでこれが基本となる音の感じ方です。

もちろんアフリカのリズムはそれ自体極めて精緻で知的な複雑さを持った構造で、 そのあり方を精確に語ろうとすれば言語のリズムのアクセント(強弱/高低/長短)、 大量の子音による音色の使い分け、ポリセントリックな身体運動のリズム、 音楽によるコミュニケーション文化など、多岐に渡って議論しなければいけませんが、 ここではラテン音楽の基本構造を理解するのに必要な、 ごく素朴なポリリズムの構造だけに注目することにします。

ともあれ、普通メレンゲやサルサをダンスだと思ってして接する人は、 「サルサは4拍子の音楽です」と習うと思います。 ところが、表面上は確かに4拍子でも実はその裏にずっと3拍子のフィールが張り付いている、 という不思議な構造をしているのがサルサやメレンゲなのです。 ちなみに、このコンセプトを支えているのが実はクラーベの重要な役割なのですが、 それはまた後ほど少しだけ触れることにしましょう。

ポリリズム練習の秘密の呪文

このポリリズムはアフリカ文化として発達してきたものですから、 アジア人や欧米人にとっては学習しないと身に付かない感覚です。 メレンゲやサルサにまだあまり慣れていない耳には最初の関門ですが、 逆にこの感覚を一度掴んでしまうと ラテン音楽の沼から抜けれらなくなるほど楽しさが倍増しますよ。

というわけで今回はこのポリリズム感覚を練習するための、 画期的(?)なオリジナルメソッドを5日に分けて紹介します!

パルスのグリッド

まず、1小節を4拍子と3拍子の両方で同時に感じるために、 その中を12個のパルスに分けて考えてみます。 4x3=3x4=12パルスということですね。 以下のようになります。

1--2--3--4-- a---b---c---

上の行は1234と4拍になっており、1拍は3つのパルスになっています。 いわゆる3連符のノリで「タカタ・タカタ・タカタ・タカタ」という感じです。

下の行はabcの3拍で出来ている3拍子ですね。1拍は4パルスになっています。 普通の3拍子の要領で「タカタカ・タカタカ・タカタカ」と感じてみましょう。

いまやってみたいのはこの「タカタ・タカタ・タカタ・タカタ」と 「タカタカ・タカタカ・タカタカ」を同時に感じてみましょうということです。 つまり、4拍3連と3拍4連を同時に感じるということです。

ここで少し蛇足ですが、少し詳しい人は、 どうして2x3の練習からではなくいきなり4x3なの?と疑問に思う人もあるかもしれません。 確かに「教科書的」には2x3がポリリズムの基本ではあるのですが、 ラテン音楽の聴解能を実践的にアップさせるトレーニングとしては この4x3のポリリズムの感じを掴むのが肝腎だからです。 4x3の練習ができれば2x3は自然と身に付いていくでしょうし、 そのうち5x3や7x3のポリリズムも違和感がなくなってくるかもしれません。

明日に続きます!

posted at: 2022-12-01 (Thu) 12:00 +0900