Merengue Panic



Advent Calendar 2022 6日目の記事

オラ・デ・ラ・ソラミミ(佐々木編)

メレンゲやサルサはトランスカルチャとして スペイン語圏だけでなく世界中で愛されている音楽・ダンスです。 もちろん言葉を理解して歌詞をしっかり味わうのが常道ですが、 逆にスペイン語を解さない日本語話者だからこその特権的な楽しみもあります! いわゆる「ソラミミの時間」。 3回シリーズでお伝えするソラミミのススメ、1話目です!

ソラミミの時間

誰がいったか知らないが、 いわれてみれば確かに聞こえる、 そんなスペイン語歌詞のメレンゲやサルサは意外と多いものです。

コミュニティによっては皆のお気に入りの定番があったりします。 その曲が掛かるとソラミミの大合唱となって、 異様な盛り上がりを見せるケースもあるとか。

もちろん、しっかりスペイン語が聴き取れる人には 共感しにくい部分もあるかもしれませんが、 もう少しオープンマインドに考えてみると 「サルサ」という音楽は最初から世界音楽市場を意識したコスモポリタンな音楽として 打ち出されたという経緯もあるわけで、 その意味ではこうしたローカライズドな楽しみ方も決して邪道とはいえないでしょう。

トランスカルチャとしてのメレンゲ

念の為確認しておくと、 サルサに比べればメレンゲはよりドミニカ共和国の土着音楽の側面が強いので、 そうした点を強く意識する人にはソラミミ的な面白がり方は他者の文化の 「横領」あるいは「搾取」と感じる人もあるかもしれません。

とはいえ、メレンゲも現代のそれは充分にコスモポリタンな音楽・ダンスになっており、 ジャズやラップや EDM などの他ジャンルとのクロスオーヴァも多々あります。 また、90年代以降はサント・ドミンゴのみならず、 サン・ファンやニューヨークへとミュージシャンたちの拠点も拡散しており、 その意味で充分にトランスカルチャになっています。

もちろん、ドミニカーノにとっては「自慢の郷土の音楽」であることには変わりないので、 その点への配慮と伝統的なメレンゲに対する真摯な敬意を持つことを忘れてはいけませんが、 その上で自由に楽しむことは悪いことではないというのが本サイトの考えです。

もっといえば、メレンゲやサルサが生まれた歴史や文化は、 もともと諧謔と混淆と過剰を旨とするアフロ=カリビアン文化ですから、 日本語話者として目一杯新しい可能性を引き出す態度はむしろ「サルサ的」 かもしれません。

Juan Luis Guerra の "Como Yo"

というわけで、今回ソラミミの時間の第1弾として紹介するのはメレンゲの3大巨頭のひとり Juan Luis Guerra の最高に盛り上がるトラック "Como Yo" です。

Duck Duck Go で Juan Luis Guerra の "Como Yo" を検索(外部リンク)

沙沙貴神社のなんじゃもんじゃの木
from wikimedia.org

一部東京のコミュニティでは「佐々木の歌」としても知られるこの曲は、 まさに「ソラミミ・メレンゲ」の代表格。 サビのいいところで「ササキ」が連呼されています。

実際の歌詞は "Si no estás aquí" つまり「もしあなたがここにいなければ」 と歌っており、もしあなたがここにいなければ僕は不幸だ、 という文脈になっています。

綴りからすれば「佐々木」というよりはむしろ「田崎」と聞こえてもよさそうなところ、 さすがに優れたソラミミは実際の音韻構造を越えて訴えてくるものがあります。 ここはやはり「佐々木」と聞きなす耳にこそハナモゲラのセンスを感じるところです。 ソラミミ・メレンゲとしてはジャンパー級といっても過言ではありません。

明日に続きます!

posted at: 2022-12-06 (Tue) 12:00 +0900