Merengue Panic



Advent Calendar 2022 15日目の記事

メレンゲレシピ(ゴルゴンマカロン編)

メレンゲやサルサは音楽・ダンスのジャンル名であると同時に食べ物の名前です。 聴く・踊るだけでなく食べることや飲むこともとても大切なメレンゲ活動のひとつ。 踊ることと食べることとのつながりを意識しつつ、 メレンゲにフォーカスしたオススメレシピを紹介します。 3回シリーズの1話目です!

黄身と分かたれた白身

メレンゲは卵白と砂糖を混ぜるだけのごく単純なお菓子。 ただし、温度や混ぜ方や按配などのわずかの差で全く出来が違ってきます。 熟練の菓子職人の中にも メレンゲの立て方を極めるのは永遠の課題だと考える人もいるそうで、 さながらダンサにとってのベーシックステップの体得や クラーベ感の獲得といったところでしょうか。

メレンゲの主役は卵白で卵黄は使いません。 というよりも卵黄が混じってしまうと上手く泡立たないため、 黄身をきれいに分離することはメレンゲづくりのポイントのひとつでもあります。 この卵白の成分は蛋白質と水分が主ですが、 混ぜるうちに分離してしまうことを避けるため、 砂糖を加えます。

カリブ海の植民地では16世紀の前半からサトウキビプランテーションが経営されました。 やがて18世紀にヨーロッパで大砂糖ブームが起こると、 大規模な集約労働の必要からさらに大勢の奴隷がアフリカから投入されます。 いわゆる大西洋奴隷経済で、 アフリカの奴隷をカリブ海に、 カリブ海の砂糖やコーヒーをヨーロッパに、 ヨーロッパは武器や綿製品を持ち込んでアフリカの奴隷を買う、 という三角貿易を営んでいました。 この貿易で富を生み出しているのは他ならぬカリブ海でのアフリカ人奴隷労働で、 その上前をヨーロッパが搾取するという構造です。 そしてこの頃、砂糖の生産で最も成功していたのがサン=ドマングつまり現在のハイチで、 既にフランスの植民地になっていました。

記録としてメレンゲ、フランス語読みではムラングですが、が確認できるのは フランス人シェフが17世紀末に残したレシピ本で、 ちょうどサン=ドマングの領有権が公式にフランスのものとなった時期とも一致します。 ヨーロッパにおけるお菓子レシピの発展が植民地貿易と表裏一体であることが分かります。

黄身を失った卵白に「奴隷たちの甘い涙」を加えたメレンゲが、 後に同じエスパニョーラ島で発生するダンス・音楽の名前と同じ響きを持つことは、 不思議な巡り合わせという感じがしなくもありません。 実際になんらかの繋がりがあるという人もいますが、 資料としてそれを説明できるものは何もありません。

ゴルゴンゾーラの刺戟

では、ゴルゴンマカロンのレシピです。

マカロンさえ美味しく出来てしまえばとても簡単な一品ですが、 複雑な味わいの刺戟的なお菓子です。 コース料理のデザートに一粒頬ばれは酔い覚ましにもなりますよ。

材料は以下の通りです。

  • 卵白 - 40g(大玉1個分)
  • 砂糖 - 15g
  • 黒糖(粉末) - 5g
  • アーモンドパウダ - 40g
  • 粉砂糖 - 20g
  • ゴルゴンゾーラチーズ(ピカンテ) - 適量
  • 黒胡椒 - 少々
ゴルゴンゾーラチーズ
from Wikimedia.org

まずはマカロンを作ります。 これが上手くいかないと台無しですがやはり初心者にはハードルが高いもの。 材料は調達しやすいですから何度も失敗してみるのがいいでしょう。

きれいなメレンゲを立てるにはグラニュー糖だけを使うのが易しいですが、 卵白の半量の砂糖を使うときに少しだけ奄美の黒糖を混ぜてみるのがメレパニ流。 白には必ず黒を混ぜるべし、 というのはコンセプト的な意味もありますが、 黒糖の持つほのかな苦みや雑味が後で面白い効果をもたらすからでもあります。

ではメレンゲを作りましょう。 卵白を泡立てつつ、少しずつ砂糖を加えていきます。 最初の砂糖を入れる前にしっかり泡立てておくことや、 数回に分けて砂糖を加えること、 卵白は少し冷やしておいてから混ぜることなどには気をつけましょう。 ツヤとコシのあるきれいなメレンゲが作れれば次はマカロナージュです。

上手にマカローナジュするためには基礎となるメレンゲがきれいに出来ていることが大事。 失敗が露見する箇所よりもひとつ前のステップにこそ真の失敗の原因がある、 というのは料理もダンスも一緒ですね。

ふるっておいたアーモンドパウダと粉砂糖を加え、 ゴムへらでボールの底に押し付けるようにして混ぜます。 ことばで書けばこれだけなのですが熟練の技が問われるそう。 ツヤッツヤにしたいのですが、ここでもやはり練習あるのみですね。 ともかくマカロンさえ出来ればこっちのものです。 完成したらしばらく乾燥させましょう。

あとはオーヴンで焼くだけ。 焼き方にもさまざまな工夫やスペシャリテがあるようですが、 これもいろいろ試しながら自分なりのやり方を身に付けるしかありません。 ここではオーヴンシートに丸く絞ったマカロンを180度で焼きます。 焼き色防止のため、途中で様子を見ながら温度を上げ下げする方法もあるようです。 10分ほどで焼き完了です。

焼き上がったらしばらく冷ましますのでこの間にチーズを準備します。 マカロンに挟みやすいかたちにゴルゴンゾーラチーズをカットします。 好きな人は大きめに切ってください。 このレシピの最大のポイントはゴルゴンゾーラを使うということ。 ロックフォールや他のブルーチーズでももちろん美味しいのですが、 刺戟の強いピカンテのゴルゴンゾーラが一番合います。

さて、マカロンがほどよく冷めたら、 シートから剥してチーズを挟みます。 これに荒く挽いた黒胡椒をたっぷりと振って下さい。 メレパニ流ゴルゴンマカロンの完成です。

砂糖の甘味と黒糖のほのかな苦味と渋味、 ゴルゴンゾーラの香りとリッチな旨味が見事にマッチします。 そして、黒胡椒のスパイシィな刺戟で強められたチーズの塩味も複雑に絡みあって、 全体でとても豊かなパンチの利いた味です。 まるでカリブ海文化のように様々なサボールのブレンド、 とてもおいしいのでぜひ試してみてください。

明日に続きます!

posted at: 2022-12-15 (Thu) 12:00 +0900