黄身はどう食べるか
メレンゲレシピに挑戦していて扱いに困るのは黄身です。 ひたすら失敗を繰り返す場合、やたらと黄身だけ余ることになってしまいます。 うまく黄身だけ使える料理を合わせて作れれば一番なのですが、 練習だとなかなかそうもいきません。
そこで結局卵かけご飯を食べることになるのですが、 メレンゲの練習のはずがなぜか卵かけご飯でお腹いっぱいということもしばしばです。 もしあれば海苔や刻んだネギやミョウガを加え、 ゴマでもふれば立派な夜食になってしまいます。
ともあれ、よいレシピの条件のひとつは材料に無駄が出ないということ。 どうしても黄身が余りがちなメレンゲレシピですが、 今回のメニューはちゃんと黄身も余らさずに使うので安心です。
トム・アンド・ジェリー
そのレシピとはお菓子ではなくカクテル。 準備が面倒で一部のバーテンダさんには嫌がられるという 噂もあるトム・アンド・ジェリーです。 禁酒法時代の合州国で流行した当時を代表するクリスマス・カクテルですが、 現代では季節に関わりなく飲まれるようになったそう。 ただ、カクテルといっても温かくして飲むホットカクテルなので、 寒い季節にぴったりですね。
トム・アンド・ジェリーという名前は 古く遡ればイギリスのスポーツジャーナリスト Pierce Egan が1821年に発表した『ロンドンの生活』という小説に由来するようです。 この本の人気が出て舞台にかかるようにったときに 『トムとジェリー、あるいはロンドンの生活』と改題されたようなのですが、 これを上演したのは別の人物だったそう。 まだこの頃は知財だのコピーライトだのといった概念が浸透していませんから、 多くの盗用・剽窃があったようです。 ともかく、この成功から「トム・アンド・ジェリー」という表現が一般に広まり、 「酒飲みで博奕好きの粗野な若者を描くこと」 という意味を獲得するようになったようです。
さて、カクテルのトム・アンド・ジェリーは、 1847年にバーテンダの Jerry Thomas という人が自分の名前からつけたという記録があります。 既に Egan 由来の「トム・アンド・ジェリー」という表現が広まった後のことですから、 そこにかけた意味もあったでしょう。 ただ、これまたいつものことですが、 既に同じようなカクテルはこれ以前から存在していたようで、 このレシピがどの程度彼のオリジナルであるかについては証明のしようがありません。
ちなみに鼠と猫のライヴァル関係を描いた20世紀生まれの人気アニメが 同じ名前で呼ばれてることについては、 公式はこのカクテルや Egan の小説とは無関係と主張しているみたいです。
レシピ
さて、では実際にクリスマスカクテルのトム・アンド・ジェリーを作ってみましょう。
トム・アンド・ジェリーにも多様なヴァリエーションがあって、 いわゆるアルコール入りのミルクセーキのようなものが多いですが、 しっかり立てたメレンゲを使うものまであります。 ここではスタンダードながらサント=ドミンゴのダークラムを使い、 トップに黒糖メレンゲをのせた風変わりな ドミニカ風トム・アンド・ジェリーにしていきます。
歴史的経緯から、 19世紀中葉頃の合州国ではイベロアメリカ産のラムを使わなかったようで、 オリジナルのレシピには明確に産地が指定されています。 これを尊重して、いまでもジャマイカ産にこだわる人もいるそうですが、 本サイトの文脈では平気でドミニカ共和国産のラムを使いましょう。 このカクテルは単にラムが美味しければ出来もよくなるので、 よいお酒、好きな銘柄を選んでください。
材料は以下の通りです。
- 卵 - 大玉1個
- 粉砂糖 - 15g
- 黒糖(粉末) - 5g
- ラム(Barcelo) - 60g
- ミルク - 60g
- 生ナツメグ - 適量
- バニラビーンズ - 適量
- クリームタータ - ひとつまみ

まずは卵を白身と黄身に分け、 黄身に粉砂糖を加えます。 これをしっかり泡立て、 色が変わってきたらバニラビーンズを入れてさらに混ぜます。
次に白身の方はクリームタータで泡立て、 甘くないメレンゲにしていきます。 ここでしっかり木目細かくフラッフィに立てておくことで喉越しのよいカクテルになります。 出来たメレンゲの1/3を別にとり、 こちらは奄美産の黒糖で甘みを加えながらしっかりツノが立つまで泡立てます。
ここでカップに熱湯を注いで温めておきましょう。 それから黄身の液と白身の2/3の甘くない方をしっかり混ぜます。
カップからお湯を捨ててよく拭き、 黄身と白身の混合液をカップの半分まで入れます。 そこにラムを加えます。 もしお好みならコニャックを少量加えても面白いフレイヴァが楽しめます。 あとは温めたミルクを静かに上から注ぎ、 一番上に黒糖メレンゲをたっぷりのせます。 最後に生ナツメグを削ってふりかければ、 ドミニカ風トム・アンド・ジェリーの完成です。
香り高いナツメグとメレンゲの甘さ、 ラムとミルクの優しい熱が、 身体を芯から温めてくれます。 ぜひ試してみてくださいね。
明日はまた別のテーマです!